ゆたかとエグモント
デンマーク エグモント教員片岡豊によるWEB日記
2007/02
21
パーソナル・アシスタント制度とダイレクト・ペイメント
パーソナル・アシスタント制度とダイレクト・ペイメント
障害者が地域で自立生活するために必要な公的な福祉サービスの一つとして、当事者が自分の介助者を雇用するための「パーソナル・アシスタント制度」がある。
「パーソナル・アシスタント制度」の発端は学生運動が盛んだった70年代初期にさかのぼり、大きく分けて2つの流れがある。一つはアメリカのバークレイを中心に展開されてきた「Independent Living=自立生活」運動であり、もう一つはデンマークのオーフス市在住の身障者たちが市当局と一緒に作り上げてき「ヘルパー制度」で、俗に「オーフス制度」と呼ばれている。デンマークではこの制度は、他に先駆けて1987年に福祉法に組み込まれ、障害者が社会で活動することを支援する「介助に関する現金支給」という公的な制度として制定された。(注参考)
この公的支援は、当事者が施設ではなく、地域社会で自立生活をすることが目的としており、主に二つの要素を持っている。一つは当事者が必要な介助をえられるように公的部門が経済的援助をすること。もう一つは、当事者が「雇用主」として介助者を自分で選び、雇用・解雇できることである。
アメリカでの「自立生活運動」は、当初は当事者運動の一環として、障害者のエンパワーメントと自立に重きが置かれ、介助ボランティアに依存するところが大いにあったが、1996年にイギリスで法定化された「ダイレクト・ペイメント」は、公的な経済援助としての「現金支給」に重きがおかれ、支給された現金をどのように管理するかは、当事者に任されるようになった。
デンマークにおいては、当事者が「雇用主」としてなって自分の介助者を採用、人事管理、解雇をすることが義務付けられているが、介助者の給料支払いは、当事者が勤務表を作成して市当局に提出し、それに基づいて市当局が介助者の口座に直接、給料を振り込むという手続きをとっている。
スウェーデンやノルウェーでは、イギリスと同様に障害者の自立支援制度がデンマークより一足送れて制度化された。スウェーデンは1994年(LASS)、ノルウェーは2000年(lov om sosiale tjenester )の福祉法改正で始めて法定化された。デンマークと異なり、スウェーデンとノルウェーでは、「パーソナル・アシスタント制度」は、当事者のみではなく、サービスを提供する団体法人である「事業主」にも応用が拡張されている。つまり、ここでは、介助者の「雇用主」は当事者のみではなく、市当局に認定された派遣団体である「事業主」でもよく、その場合は、当事者は「職場リーダー」の役割として、おもに「仕事の指示」機能に専念することになり、人事や給料管理は介助者の派遣団体が一括して担うことになる。
このように、欧米における障害者の自立生活支援の一つとしての「パーソナル・アシスタント」制度は、ボランティア制度から、当事者への「現金支給」という「ダイレクト・ペイメント」、「個人雇用」、そして介助者の「派遣事業」まで含まれる幅広い内容をもったものになっている。 2007年2月21日
注:その背景は、クローさんの自伝書である「クローさんの愉快な苦労話」(ぶどう社・片岡訳、大熊由紀子監修)の本文、および解説に詳しく叙述されているので、興味のある方はぜひどうぞ。また、大熊由紀子さんの「えにしの会」のHPに、デンマークの自立生活に関する記事が、アップされているので、あわせて読んでもらえれば幸いです。http://www.yuki-enishi.com/ の「自立生活の部屋」
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